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商品の情報

パン屋再襲撃 (文春文庫)

パン屋再襲撃 (文春文庫)

村上 春樹
文藝春秋(1989-04)

アマゾン価格: 450
 → マーケットプレイス: 1 円 より
定価: 450 円
アマゾン売上ランキング: 70809位
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[ユーザーによる評価] 平均評価: 4.0 / 総数: 28件

[5点] 何といっても「ファミリーアフェア」
何といっても「ファミリーアフェア」でしょう。1985年の刊行ですので、バブル(1986年〜)前夜のどことなく抜けた雰囲気、シリアスにならない都会的なタッチ、それでいて家族間のそこなかとない親愛と目線を高くしない主人公の自省の感もあって、大いに憧れたものです。80年中期にはこうしたキャラが時代の雰囲気だったし、社会的にもアクセプトされたのだと思います。

かなり気障ですが主人公のセリフや描写に思わずニヤリとさせられる作者の技量は流石だと思います。恐らく、このストーリーは映像化してもあまりその魅力の本質は伝わりにくいのではないでしょうか。文章であるが故に伝わるものがある、非常に技巧性の高い作品だと思います。

村上氏自身が言うところのドライブが利いた短編小説の秀作。1993年Knopf 社で編集、出版された短篇選集『The Elephant Vanishes』(2005年、「象の消滅」 短篇選集 1980-1991として日本でも発売)にも短編代表作のひとつとして収録されています。 (2008-08-22)
[3点] 村上春樹はこんなに詰まらなかったのか、と一寸、驚いている。
トレーディングの方は完全自動化に移行しつつあるので、本ばかり読んでいるが、
この短編集は、記憶では今回初めて読むものだと思う。しかし、爆笑の太田光に
触発されてヴォネガットの『タイタンの妖女』を途中まで読んだだけでレヴューを
送ってくるいい加減な連中と、同様、私も2編を読んだだけである。
少なくとも、今の所は。

『パン屋再襲撃』は、押井守の『立ち食い師列伝』に影響を与えたところ
大である事は大方の人の知る所だと思う。「食う」と言う行為が
「飢えを満たす」事と密接にリンクしていた時代が終わろうとしていた1985年の
日本を象徴しているかの様な作品。この後、「飽食の時代」と言うよりも
「グルメの時代」に為っていく訳だが作品で描かれているのは、「暴食の一夜」である。
正確には「暴食」へと駆り立てる「暴力性」と言っても良いかも知れないし、
バブル期の「狂熱」の先鞭とも読み取れる。「呪い」を払拭して「無気力」と
「怠惰」をブレイクスルーするものが、アナーキーな「暴力性」とも言えるか。
1980年代当時のオブローモフが、彼の妻の「オーヴァー・ドライヴする欲望」に
付き合わされて引きずり回される話とも、読める。バブル期の女性の行動パターンが
既にこの時点で、主人公の妻に其の儘、表れている感がある。

『象の消滅』は、象と初老の飼育係が「異界」へと姿を消してしまう話。
やはり、1985年の作品だが、数年後に書かれた諸星大二郎『妖怪ハンター』の
『異界の客人』を髣髴とさせる。個人的には、稗田礼二郎のシリーズでは
この『異界の』が最も好きだが、『象』の主人公は「便宜的な此の世」に残って
日常をやり過ごし、唯、時が流れ季節が移り行く様を表して、本編は
終わる。日本的無常観を書き表した作品として読むと、「時の流れの無常」と言った
陳腐な事、この上ない一品に為ってしまう。この作品で「異界」を垣間見せる程度でも
良いから、描いて見せて欲しかったものである。若しかしたら、諸星大二郎も押井守同様、
本編にインスパイアされて、『異界の客人』を描いたのかも知れない。

『ファミリー・アフェア』は、私の知る限りでは、村上作品の中で最も阿呆臭い一作。
「やれやれと僕は思った」と言う決まり文句が頻発するので、村上春樹作品の語り手は
冗長的で自分の事ばかり一人称でダラダラ語りすぎると言うイメージは
恐らく、この作品によって定着して仕舞ったと言えよう。
They are what they are.
他人の人生の事は自分には関係ないと考えて生きている主人公は
成り行き上、血の繋がった妹と暮らしている。5年間も、である。
「家」「血縁」「血族」が片方にありながら、其れを断ち切る事無く
「個人主義」に徹しようとする「滑稽なる1985年のオブローモフ」の
姿。こういう人間は、「やれやれ」所ではなく、もっと死ぬほど「ウンザリするぜ!!」と
言う生活を5−7年位送った方が、本当の個人主義が身に付くし、一人で
生活しなくては駄目である。そうなって初めて、孤独が「通常状態」の
人生を「謳歌・享受」出来るのだ。しかし、実に「くだらねー!」一作だ。
世代論的に言えば、85年の時点で27歳の主人公は、1958年生まれか、
1957年生まれである。旧人類と新人類との境界線上の世代だが、
如何にも、「駄目なタイプの新人類モドキ」のカリカチュアの姿を
具現化している。『駄目になった王国』に倣って言えば、『最初から
駄目だったし、王国にすらならなかった、共同体だか何だか
判らない様な、有象無象の集合体』と言うべき「人生」、或いは
そう言う「生き方」。昨今の社会状況を鑑みると、「烏合の衆」と言うより
「学級崩壊」的な人生、と言えよう。

『双子と沈んだ大陸』について。『ファミリー』が「楽園の向こう側」なのに
対して「楽園の此方側」の情景から始まる。キヨサキ風に言えば、『ファミリー』の
「僕」がEクワドラント、『双子と』の「僕」はBクワドラントに属する。
しかし、笠原メイと一緒にオフィスを出た後、例に拠って例の如く
「一人称のグダグダ」が始まる。正確にはメイと分かれた後、より顕著に
なり、何度か訪れた事のある小さなバーでバーボンを飲み始めると
完全に「酔っ払いの戯言」。「やれやれと僕は思った」が、この時点で登場。
本書に収録されている先の三作の時代背景が1985年と言えるが、
本作は二部構成になっていて、1974年と、その3年後。
1977年の11月の時点で「僕」が語る夢がポーの『黒猫』を
思い出させる。4部作との「不吉なリンケイジ」を暗示している。

字数制限があるので他は一括してレヴュー。『ローマ帝国』は冷風ドライヤーの
風の様にドライな作品なのに対して『ねじまき鳥』は女性の胎内の様に
ウェット。前者の媚薬の象徴が「牡蠣鍋」と言う日本的日常に密着した
メタファ。それ程エッチではない。後者で繰り返し登場する「女達」が
「僕」の人生をどこかで狂わせた「死角」が自分自身の頭の中ではなく、
「女の中のどこか」である事を暗示する。

更に、続きのレヴューは、気が向いた時に、また書く「予定」である。 (2008-06-04)
[5点] 不思議さん
村上春樹氏の初期の短編集。
比喩が上手な村上さんの作品に対しては
陳腐でチープな表現かもしれませんが
相変わらず
不思議過ぎます。
なんていうか
およその常人には行き着かないであろう方向に物語が進むのです。
それがたまらなく好きなのですが。 (2008-03-18)
[5点] 「わからないものはわからない。」でいいという人生。
「ねじまき鳥クロニクル」のプロトタイプが収録されている。「パン屋再襲撃」はボリスと中尉の挿話の原型。人が人に呪いをかけて、無気力人間にしてしまう話。但し喜劇調。呪いとは、人のアイデンティティーや自己像、自分という「物語」を修復不能なまでに粉々にしてしまうこと。
「ねじまき鳥と火曜日の女たち」はクロニクルと似た話だが、問題を抱えているのは奥さんではなくむしろ旦那のほうだろう。「風の歌を聴け」4部作の主人公と同じく1970年代版オブローモフのような「余計者」。世界に何の意味も脈絡も見出せず、したがって何もやる気が出ない。
「象の消滅」は猫や主人公がパラレルワールドに入り込む挿話の原型だろうか?一種の奇蹟譚。奇蹟体験で人生の「無」意義に目覚める。世界の全く了解不能の「不条理性」(p11)に接して、世界と人生の意味を完全に喪失し女の子と付き合う気力も失せてしまう。「ファミリー・アフェア」は婚約者を義理の兄が嫌う。またクロニクルの主人公同様どこか無気力で「人と人とがぶつかり合う本当の大人の生活」から逃げている。「双子と」は「ピンボール」の続篇。主人公はリアリティーと自明性と意味の欠落した対象喪失型の悲哀感のなかで、世界から疎隔され続ける。双子は「閉じ込められる」。笠原メイ登場。「ローマ帝国」は満州国崩壊に該当するのか、な?日常生活も世界史的事件も主人公にとっては同じように無価値でどうでもいい。世界の「便宜性」に合わせる生き方、感じ方の探求?ともいえる。
4部作とクロニクルをリンクさせる作品集。 (2008-01-25)
[5点] 質の高い短編集
カンガルー日和が短編集だとすれば、パン屋再襲撃は中編集と位置づけられそうです。
どの編も完成度が高く、読み終わった後に充実感を感じます。
そう言う意味では彼の長編著書が好きな方でも十分満足できる作品となっているでしょう。

また、「双子と沈んだ大陸」は村上春樹の"僕”シリーズの長編4作品に関わる短編作品となっていますし、
「ねじまき鳥と火曜日の女たち」は題目通り“ねじまき鳥クロニクル”に関わる短編作品となっており、
彼の長編作品を読んだ人にとっても興味深い作品となっています。
もちろん、彼の本を読んだことの無い人でも、彼の魅力を感じるには十二分な作品であることは
間違いないでしょう。

作中には"ワタナベノボル”や”笠原メイ”も登場するので、彼のファンにはたまらない一冊です。 (2008-01-24)

パン屋再襲撃 (文春文庫)

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