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敵 (新潮文庫)
筒井 康隆
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ちょっと見る目が変わってしまった
読んでみて、かなり驚いた。作風が変わっている。著者も読む方も年を重ねたのだから当然かもしれないが、楽しめたのである。妻に先立たれた気楽なひとり暮らしの老人の、現実と妄想の入り混じった生活。それを悲壮感なく描けるのは筒井氏だからこそかもしれない。これは今まで筒井作品を避けていた方にもお勧めできる。 (2008-10-07)
新境地を開いた老人文学
前半は芸術論の元教授だった老人儀助の律儀な日常生活を描く。しかし、そこには文学的工夫も含まれており、例えば擬音の形容詞をワザと漢字で書く。
「動悸動悸する」<-「ドキドキする」
音だけでなく意味も合っている所が筒井の凄さ。また、
「下司下賤下根下劣醜悪陋劣な」
等と言うような長列漢字の形容詞で笑わせてくれる。そして"読点"を一切使わずに文意を通す。筒井の筆力のなせる技である。更に、淡々とした描写の中で、金銭と食べ物の嗜好に煩い儀助の姿を執拗に追って、老人の寂寞を浮き彫りにして行く辺り鋭い。この他、性欲、老臭、亡妻の思い出などが丹念に語られる。まるで「老人日記」のようである。観察眼の鋭さに驚く。前半から夢の話が頻繁に出て来るが、中盤「敵」の辺りから、語りが現実のものなのか儀助の妄想なのか曖昧模糊として来る。そして、「戦闘」、「神」辺りから筒井の筆はエスカレートして行き、「敵」との闘いが最高潮に。最後には静謐が訪れて、「春雨」が「使途使徒」、「死都死都」。
高度な小説技法と鋭い観察眼で、"老い"を描き切った秀作。 (2008-02-04)
巧妙に混乱へと引き込まれた。
この小説は、彼の日常生活の事細かい描写によって始めらる。
ある種の随想のようでもあるのだけれど、
儀助はあくまでも登場人物として客観的に書かれていて、
こだわりを持った可笑しな老人像が見られた。
しかし、
デリケートになってしまった直腸の心配をしたり、
亡き妻や昔の教え子に恋焦がれて夢想したり、
意識の流れがうまく組み込まれていて、
儀助は生々しさを帯び、私小説のような印象も浮かび上がり、
そのギャグ性によって、たびたび突発的に笑わされた。
しかししかし、
儀助の妄想は徐々に暴走し、それが小説を飲み込み、
いつの間にか、筒井ワールドのハチャメチャな領域に突入していて、
儀助だけでなく、読んでいる自分の頭までグチャグチャにされ、
クラクラしつつも快楽的な読後感だった。 (2006-07-10)
筒井作品中の最高傑作の一つ
筒井ファンならずとも是非読むべき一冊。 (2006-01-26)
もしもの自分・・・
年老いて感じること、見える部分、感じる部分の他に
見えず感じず、ただ漠然と広がる歳をとる事への恐怖が、
前半の規律正しい描写から、後半へかけて恐怖に呑まれていくさまへと
よく表現出来ていると想う。
核心に触れそうで触れない描写、
そこが筒井康隆の面白い所だと想う。
これを読んだのは発売当初だが、なんど読み返しても
筒井ワールドに吸い込まれる面白い作品。
(2004-12-07)












